「テストが始まって三十秒後、周りに聞こえるように『簡単だ!』とか『この問題、知ってる!』と言うんだ。そうすれば、他塾の受験生はプレッシャーを感じて焦りだす。さらに、休憩時間には『さっきの問題、ムチャクチャ簡単だったよな』『ああ、余裕でできたよ』と、数人集まって、これも周りに聞こえるように会話をするんだ。相手(他塾生)を精神的に追い詰めろ。入試会場は戦場だ。どんな手を使ってでも勝たねばならない。一瞬たりとも気を抜くな!」某進学塾では、入試前日に「取って置きの秘策」としてこの様な講義が行われたことがあります。
この「秘策」が、実際どれだけの受験生によって実行され、どれほどの威力を発揮したのかは定かではありません。しかし、実力のある者はこんな姑息な手段を使わずとも、正々堂々と勝負できるはずです。もし、入試会場で声高に他の受験生を不安に陥れるような発言をする受験生がいたら、その話は間違いなくガセネタで、おそらく自分の実力の無さを隠そうと必死になっているのです。第一、どんなに優秀でも小学生に入試問題の難易度を批評する力などありません。
とはいえ、今終わったテストで自分がどれほど得点できたか気になるのは当然です。不安になって、休憩時間に友達同士で行う「三番の答え、何と書いた?」「五番の答えは○○だよね」といった会話は、「するな」と言うほうが無理な話でしょう。その結果、一喜一憂もするでしょう。中には、二、三回の情報交換だけで「合格間違いなし!」と楽観したり、「もうだめだ!」と悲観したりする受験生がいるかもしれません。しかし、入試問題の難易度を批評する力の無い小学生が、入試の合否を判定する力を持っているはずはありません。
受験生が入試会場でやるべきことはたったひとつ。それは、ただひたすら一心不乱に今まで勉強してきたことを答案用紙に書き尽くすことです。ガセネタに振り回される暇も、自分の力の及ばないことに一喜一憂している暇もありません。
皆さんの健闘を祈ります。
(朝日小学生新聞 第34回 2008年1月9日掲載)
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